開放的な民家のよさを現代的にアレンジ
光や風を妨げない開放的な間取りや工夫を
家族が集まりやすいだんらんの場
民家のよさを取り入れた家は自然と人にやさしい
家族の気配を感じる家は、子供に安心感を与える
開放的な家には快適性をアップする断熱・気密を
お年よりにとって、やさしい家は、だれにでもやさしい
耐久性、メンテナンス性、朽ちないデザイン、柔軟性
10
健康で、五感を育み、触りたくなる
家族の安全を守る耐震・耐風・防火・防音・防犯・健康
開放的な民家のよさを現代的にアレンジ
- 「田の字間取り(漢字の「田」)」と呼ばれる民家は障子や襖を開け放てば、大空間が現れます。
何も必ず和風にするのではありませんが、そんな光や風が通り、家族の心も通じ合う、開放的で気
持ちいい家を現代的に創りたいと思います。風通しのいい家は家族間の心の「風通し」もいいです。 - 玄関から個室へ直行したり、小部屋を多くした閉鎖的な「旅館型」と呼ばれる間取りが、風通しを悪く
し、また家族のコミュニケーション不足や子供の問題を引き起こす原因のひとつと言われています。
なるべく引戸
- 引戸には様々な利点があります。ドアは閉めた状態が普通ですが引戸はどの状態でも使えます。
通風、採光、空間の融通性・広がり、バリアフリー、邪魔にならず、家事動線がスムーズなどです。
気配を伝えるので、家族とのつながり感が生まれ、コミュニケーションや思いやりの心が育ちます。
開閉によりライフシーンの切替えができます。上吊式であれば軽く、床のレールをなくせます。
見通しのよさ
- 家の中を端から端まで見通せると、広がりを生んで気持ちいいし、家族が離れていても互いに何を
しているか分かり、心がつながります。キッチンから全て見通せるといいですね。 - 部屋を引戸で仕切り、開けたままの状態で使うことが多いほど、広がり空間が生まれます。
- 中庭を介して、自分の家が向こうにも見えると、中庭を内に取り込んだような広がり感を与えます。
回遊性のある間取り
- 行き止まりをなくすと、楽しい家になるだけでなく、家事動線や来客時にもうひとつの動線があるな
ど、便利になり、風通しもよくなります。2つの階段や吹抜で立体的に回遊できるとなおいいです。 - 外縁やウッドデッキを介して、外と内をぐるぐる回れるのも楽しいと思います。
- 子供が、のびのび育ちます。
できるだけ廊下のない間取り
- 民家は、部屋と部屋が直接つながり、廊下はありませんでした。(広縁や縁側が廊下代わり)
- 無駄な廊下はなるべくなくし、家全体が自然につながると、家族がふれあう機会が増えます。
- 廊下がないほうが、風通しが良くなります。やむをえず作る廊下と部屋の間は、風通しを考えて引
戸とし、開閉の調整ができるといいです。また廊下とLDKの場合は開け放てば広がりが生まれます。
視点を下げた暮らし
- リビングは思い切って床座スタイルにしてもいいし、そうでなくても、座面の低いソファにすると落ち
着くと思います。 - 低い家具は部屋を広く見せますし、視点が下がるので、広く見えます。
- 食卓やイスを低くゆったりすると、落ち着き、そのまま食後もつくろげるでしょう。
家族が集まりやすいだんらんの場
- 自然にふれあえる間取りや様々な工夫を考えます。だんらんの場はLDKだけではありません。
コーナー性をもった広い「使われる」LDK
- 家族みんなが自然に集まるよう、LDKは、見通しのいい、各自のびのびと好き勝手できるような広
さとコーナー性をもたせたつくりがいいでしょう。続き和室を隣接させるのもいいと思います。 - 書斎や家事室などを設けるのもいいですが、LDKに共用カウンターを設ければ、その分空間を広
げることができ、宿題をするなど、誰でも使えるとコミュニケーションの点からはいいと思います。
LDKに入ってから、上がる階段
- 階段は玄関から、直接上がれないよう、LDKに入ってから、上がる位置がいいでしょう。お子さんが
自然にあいさつできるよう、奥様のいるキッチン前を通って上がれるようにするともっといいです。 - LDKと一体のオープンな階段は2階との結びつきを強めます。省エネを特に気にされる方は、階段
前に引戸を設けるといいです。
事例では吹抜でも効果的な輻射遠赤外線ヒーター「サンラメラ」を採用。
上下階のコミュニケーションを促す吹抜
- リビングに吹抜を設ける場合は、2階の共用空間や吹抜側に小窓のある部屋が面するといいです。
- LDKから上がる階段に、小さくても吹抜を付属させると同様な効果があります。
- 間取りを平面だけでなく、断面も一緒に考え、面積以上に広がりを与えます。
家族の気配を感じる家は、子供に安心感を与える
- コミュニケーションを促し、あいさつなどの躾が自然に行われ、子供が健やかに育ちます。
- 自然素材を使った光や風を感じる豊かな空間は、感性豊かな子供を育てます。
しつらいスペース
- 花や小物、絵などのアートを飾れる棚やスペースがあると、感性豊かになります。
- 季節ごとに飾りを変えると、季節感を演出できます。
- 床の間が従来、その目的を果たしてきましたが、もっと普段から目に付く玄関やLDなどもいいです。
- 家族の書いた絵や習字、記念写真などを飾ると、家族間のコミュニケーションを深めます。
共用カウンターやキッチンカウンターや大きなテーブル
- 子供は小さいうちは自分の部屋よりも、お母さんの近くの方が、分からない所をすぐ聞けるし、安
心して自然に勉強しやすいと思います。 - LDK廻りにみんなが使える場所があり、家事や書斎、勉強スペースになるといいでしょう。
- キッチンカウンターは子供が座りやすいよう低くすると、朝食も取りやすく、手伝いもしやすいです。
子供室のドアは気配を伝えるものに
- 引戸にして普段から全開させるようにしたり、閉めても気配の分かる半透明ガラス等を入れたりする
と、子供は家族とつながっているという安心感が生まれ、勉強にも集中できると思います。 - また、お母さんの料理をしている音などが聞こえ、言葉によらないコミュニケーションがとれます。
- プライバシー最優先を見直し、いい親子関係にしたいものです。
子供室の見直し
- 限られた予算の中での面積配分では、LDKを大きく、子供室は圧迫感を感じさせない工夫をして、
多少小さくてもいいのでは。広くて何でもそろった部屋が快適すぎて、こもってしまわないためにも。 - 兄弟の人数や性別、年齢差にもよりますが、1室を最初は共用でその後、成長に合わせて家具で
仕切るなどの工夫しながら、変化できるほうが兄弟の絆も深まりますし、将来対応もしやすいです。
お年よりにとって、やさしい家は、だれにでもやさしい
- だれでも年を取ります。将来を考えた設計を心がけています。
バリアフリーで安全な引戸
- 大きく体を動かさなくても操作しやすく、楽で、介護もしやすいので、特に水廻りに使うといいです。
- ドアのように突然開いて、ぶつかることもないので安全です。
バリアフリー用に見えない
- 手摺やベンチなどの機能を持ちつつ、違和感なくインテリアに同化するデザインとします。
- 右の事例は、玄関脇に使わない時は飾り棚に見えるベンチを設け、靴の履き脱ぎを楽にしたり、
買い物袋をちょっと置いたりできます。
手摺も和モダンのインテリアと同化するよう、和室の床柱に見立て、持つ部分をくりぬいています。
健康で、五感を育み、触りたくなる
- 民家は「木と土と紙でできている」と言われたように、自然素材だけで作られていました。
- 今、自然素材が注目を集めているのは、シックハウス問題、環境問題も後押ししていますが「空気
の気持ちよさ」「木や土壁の表情」「時を経るごとに深まる味わい」に、やすらぎを感じるからでしょう。 - 自然素材ならではの特性があり、それを理解していただいた上で使っていただくようにしています。
呼吸する素材
- 湿度を調整し、有害な化学物質を出しません。
- 空気がさわやかで、新築の家にありがちな、いやなにおいがしません。
肌触りがいい
- 一般に自然素材は高いと思われがちですが、無垢でもパイン材など手頃なものもあります。傷付
いても、削って直せますし、針葉樹は触ってみると、冬は温かみがあり、夏はさらっとしています。 - 木部の塗料は、浸透型で木の温かみを感じ、べたつかず、安全な自然塗料を使っています。
経年変化により、味わいを増す素材
- その風合いの変化や褪色がむしろ落ち着いていくような素材を使いたいです。
- 自然素材は年月と共に味わいを増しますが、既製品は出来たときが一番で、後は汚れて行きます。
■ 環境にやさしい
- 木や草は植林などで再生可能ですし、廃棄時にリサイクルできたり、土に還るものが多いです。
光や風を通す開放的な間取りや工夫を
気持ちいい光の入れ方
- 光は吹抜や中庭や開放的な間取りの工夫によって、奥まで届きます。
- ただ明るければいいというものでもなく、落ち着き、奥行き感を出す心地よい陰影も必要です。
- 地窓(床近くの窓)、トップライト(屋根に窓)、障子などの拡散光など雰囲気を創る光も考えます。
- まぶしすぎる光を庇等でカットし、デッキ・床や軒裏・天井に反射させるとやわらかい光になります。
民家のよさを取り入れた家は自然と人にやさしい
風土・気候に適応した民家のよさを現代的にアレンジ
- 民家は以下のように、各地域の風土・気候にうまく適応してきました。
多い雨や暑い夏に対して・・・深い軒(夏は日差しを遮ります。冬は太陽高度が下がるので、あたた
かな光が入ります。雨でも窓を開けられます。)
まぶしすぎる光に対して ・・・ 障子、すだれやよしずの利用
高温多湿に対して ・・・ 高床、開ければ風が通る障子や襖で仕切った開放的な田の字プラン
寒い冬に対して ・・・ 雨戸や障子を閉め空気層で囲み断熱する緩衝地帯としての縁側、襖
を閉めて小部屋化、断熱材としての厚い茅葺屋根、作業できる土間
- 現代生活に合わず、ダイレクトには使えないものもありますが、快適性や省エネのために、なるべく
これらの知恵を現代的に生かしたいと思います。深い軒や庇等はモダンな箱型の家でも可能です。 - この地域は高温多湿で雨が多いです。雨の日でも、快適に過ごせる家にしたいと思います。
雨降りでも窓が開けられるように深い軒や庇、外で過ごせる庇等のある外縁やデッキ、テラス、明
るさが奥まで届き、風が通る開放的な間取り、目的に使える広い土間(冬には蓄熱)、調湿性のあ
る無垢の木や左官壁などの自然素材。 - 風が強い、雨が多い、雪が降るなど、気候は地域によって変わります。(特に風向きや強さ)その
土地の気候にあった家づくりをします。愛知県内でさえ、ずいぶん違いがあります。
開放的な家には快適性をアップする断熱・気密を
均一な環境になるように断熱・気密
- 吹抜や引戸による開放的な間取りの場合は特に、建物内がある程度均一な環境になるようにコス
トバランスを考えながら、気密・断熱を求めていきますが、冬以外は積極的に外へ開きたいですね。 - 外張り断熱が注目されていますが、一長一短あり、要望や条件をお聞きして、充填断熱も含め、
様々な方法から選びます。調湿性のある羊毛断熱材などは、外壁内結露の心配を減らせます。
快適にすごすために遮熱・防湿
- 温暖なこの地域では、夏の暑さや湿気対策にもっと重点がおかれるべきです。
- 熱を反射する遮熱シートは天井ふところの少ない勾配天井に向いています。
- 床下に湿気をこもらせない土間コンクリートや基礎パッキン工法、外壁や屋根裏の湿気や熱気を
排出する、外壁通気工法や小屋裏換気を採用しています。
耐久性、メンテナンス性、朽ちないデザイン、柔軟性
長持ちさせる耐久性
- 家の構造体自体を様々な方法で長持ちさせることはいうまでもありません。
合理的でメンテナンス性を考慮した素材
- 木造住宅の外壁はサイディング(セメント系、金属系など)が8割と圧倒的なシェアをもっています。
レンガ調やタイル調など再現性豊かな物が作りやすく、施工しやすく、人気も高いからです。
しかし、いずれは再塗装を行う時期がきます。以前と全く同じようにタイル目地まで、リアルに現場
で再塗装ができるのでしょうか。廃番も早いし、みんなが使うからいいものと考えていいでしょうか。 - 屋根にも使えるガルバリウム鋼板は高耐久でメンテナンスしやすいです。
吹付左官壁のジョリパットネオのように、ひび割れしにくく、低汚染タイプが登場してきました。
木を張るのも味わい深くていいですが、きちんとしたメンテナンスが必要です。 - インテリアでは、張替え不要で、何度でも塗装できるドイツ製再生壁紙は無塗装でも使えます。
- 他にもご要望を伺いながら、デメリット、メリットも説明しながら検討していきます。
色あせしないデザイン
- 住宅デザインにはファッションと同じように「流行」があり消えていきます。また、自分たちが年老い
た時も考え、いつまでも飽きが来ず、愛着を持って永く住まえることが重要です。
変化への柔軟な対応ができる空間
- 設計している今現在だけを考えず家族の成長や家族構成やライフスタイルの変化に合わせて対
応できる空間がいいです。 - 特に子供室間は固定した壁をなるべく作らず、引分け戸や引込み戸や天井までの引戸にしておく
と、全開すれば部屋がつながります。引き違い戸の場合は、戸を外せばよく子供の成長に合わせた
使い方ができ、将来子供の独立後に物置としか使えない小部屋ばかり残るということがありません。 - 使う人を限定せず、「だれの部屋」より「何をするスペース」という考えや余白のあるような広がりの
ある家は対応しやすいです。(そのため図面の部屋名は室1・2・・と表現しています)
家族の安全を守る耐震・耐風・防火・防音・防犯・健康
心強い耐震・耐風・防火・防音
- 自由に構造を選べますが、木造であれば、予算が合えば、外周をダイライト等の耐震パネル張り
した木造軸組パネル工法を薦めています。また、要望や予算、土地の条件、法的制約などを考慮
して、鉄骨造や鉄筋コンクリート造等を選択することもあります。 - 地震対策の工法や材料は日々進化しており、情報収集して耐震設計に生かしています。
デザインとの調和を図った防犯
- 事例のように閉鎖的にするよりも、透けて見えるほうが隠れ場がなくてドロボウに狙われにくいです。
- 窓にはなんでも、シャッターや面格子を付けるのではなく、デザイン的に重要な部分は振動セン
サーダイヤル錠付きクレセント、内面格子、高窓などにして、デザインとの調和を図ります。 - 防犯ライトや踏めば音が鳴る砂利敷舗装にするなどの対応もします。
































