Eco House / 10のエコハウス 自然素材と自然の力による、パッシブデザインのデザインエコハウス

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「パッシブデザイン」とは?

「アクティブ」な機械等に頼らず、自然の力を利用

自然エネルギーをそのまま受動的に利用する、家の配置や造りで行うエコハウス設計法

  • エコハウス設計(=デザイン)法の大前提です。
    「パッシブ」の意味は「受動的」であり、反対語は「アクティブ(能動的)」で、エアコン等の機械です。
    なので、「パッシブデザイン」を直訳すると、「受動的設計」となります。
  • なるべく機械に頼らず、太陽を上手くコントロールしたり、高気密・高断熱にし、自然素材を使い、四季を通じて心地いい「光や風が通り、冬暖かく、夏涼しい」省エネ低燃費健康快適エコハウスを高いデザイン性で創ります。「デザインエコハウス」を。
▲南大窓・吹抜・吹抜縁すのこ床・引違戸
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パッシブデザインの設計要素

太陽の光や熱、風の「開ける」と「閉じる」のデザイン

高気密・高断熱にした上で、太陽の光や熱、風がほしい時には開き、ほしくない時には閉じる

  1. 自然風の利用  ・季節風向を考えて風をつかまえて抜く、夜間に外気を取り入れ、涼しくする
  2. 昼光の利用   ・太陽の光が届きにくいところまで明るくし、照明をなるべく使わない
  3. 日射熱の利用  ・冬に窓からあたたかい太陽のひざしをとりこみ、暖房代わりにする
  4. 日射遮蔽    ・夏に暑い太陽の日射熱を遮り、室内に入れない
  5. 高気密・高断熱 ・少ないすきまで熱と湿気もれを防ぎ、断熱性を高め、熱ロス・侵入を防ぐ
  • これら以外にも、蓄熱と換気と自然素材も重要です。
  • 各要素は対立するので、いかにうまくバランスをとったり、対立を解消できるかが、設計力の差になります。
  • 例えば、大きい南窓は、風、光、日射熱は有利ですが、日射遮蔽や高気密・高断熱の点では、不利なので、それを補う日射遮蔽スクリーンや、断熱窓やエコガラス、断熱ブラインド等を使います。
▲中庭・高窓・障子・通風上げ下げ障子
▲軒・カバードポーチ(大庇)
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「エコハウス」の定義とは?

パッシブデザインが大前提

環境省の定めた定義 3つのテーマ+プラス1

  • ①に環境基本性能すなわち、パッシブデザインを行ったものを前提としています。
    ②は自然・再生可能エネルギー活用、③はエコライフスタイルと住まい方、プラス1は地域らしさです。
  • ②の設計事例として、太陽光発電太陽熱給湯雨水タンク、基礎断熱による地熱利用、薪ストーブ(バイオマスエネルギー)があります。
  • ③は、暑い時は窓を開ける、寒い時は一枚着るなど、住まい手の意識や行動も大切です。
  • プラス1は、地域の気候風土文化に根ざした、地域らしい住宅です。

「自称エコハウス」

  • 住宅業界では、「エコハウス」という言葉が、正確に理解されないまま、使われています。
  • 自然素材住宅だから、人や環境にやさしいから、「エコハウス」
  • 省エネ設備や創エネ設備等のエコ設備があるだけで、「エコハウス」
  • 高気密・高断熱にしてあるだけで、「エコハウス」
  • それらは、「自称エコハウス」です。上記3つともあるのが望ましいですが、優先はパッシブデザインです。

後からしにくいパッシブデザイン

  • 「エコハウス」は省エネですが、エコ設備だけでは、「エコハウス」とは呼べず、「メカハウス」です。
    例えば、低気密・低断熱で熱のロスや侵入がある家に、太陽光パネルを乗せる場合です。
    エコ設備を付けたからといって、光熱費が下がるだけで、心地よく、快適になるとは限りません。
  • エコ設備は、後からでも設置可能なケースが多いです。
  • パッシブデザインリフォームすることができるものもありますが、パッシブデザインは、建物の配置や造りなので、後からでは、改良が難しかったり、大規模になるので、優先なのです。
▲坪庭・地窓・高窓・続き和室
▲廻り広縁・雪見障子・地窓
▲南大窓・吹抜・吹抜縁
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エコハウスの数々のメリット

心地よさ、快適、開放的な間取り、健康、省エネなど

四季を通じて心地よく、快適

  • 光や風が通り冬暖かく夏涼しくなり、快適になります。

開放的な間取りが可能になる

  • 吹抜間仕切の少ないワンルーム的な開放的な間取りは、太陽熱が届き、が通りやすくなります。
  • 気密性や断熱性を高めると、熱のロスや侵入を防ぎ、冷暖房効率が高まって、ムラのない室温になり、冬は体感温度が上がり、室温がそれほど高くなくても寒く感じなくなり、快適になります。夏はその逆です。
  • 暖房していない部屋も暖かくなり、家じゅうの温度差も少なくなるので、開放的な間取りが可能になります。

家族の健康を守る

  • 家じゅうの温度差が少なくなると、温度のバリアフリーとなり、冬のヒートショック緩和になります。
    ヒートショックとは、冬に暖房の効いた部屋から、寒い浴室やトイレで、急激な温度変化によって血管が収縮・拡張することで起こる悪影響のことで、年に1万7000人も亡くなっており、交通事故死の3倍です。
  • 夏暑い家は熱中症になり、冬寒い家は、ぜんそく、冷え症など様々な疾患を引き起こします。
    逆に寒い家に住んでいた人が、暖かい家に住むと、様々な症状が改善され、医療・介護費削減になります。
我慢しないで省エネ ・光熱費削減、低燃費、エネルギー価格高騰対策
環境にやさしい ・低炭素(省CO2)化による地球温暖化防止
室内の空気がキレイ ・通風換気・自然素材でカビダニ抑制
遮音性・耐久性が高い ・高断熱で遮音、高気密で結露防止
災害時の備え ・高断熱や太陽光発電、太陽熱温水器、雨水タンク等でしのげる
▲中庭・南窓・高窓・日よけ兼ネコウォーク
▲吹抜、引違戸・ランマ、高窓へ通る風
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自然風の利用

風をつかまえ、平面だけでなく立体も考えて抜く

心地よい風の流れ

  • 地域や季節によって変わる風向きや強さを調べ、風向に合わせて建物配置や形態を考えることもします。
  • 風の流れは、立体的にも開放的な間取り引戸ランマを多用すると良くなります。
  • 地窓、吹抜や階段の窓、高窓、天窓など高低差があると、暖かい空気は上がるので、風通しと排熱できます。
  • 風をつかまえるウィンドウキャッチャーとなる建物形態袖壁縦すべり出し窓にするといいです。
  • 事例は、吹抜に面する2階共用コーナーの高窓から通風排熱します。吹抜天井のシーリングファンを逆回転し、上昇気流を創り出し、効果を高めることもできます。隣の子供室のランマを通しロフト高窓へ抜けます。
▲吹抜・高窓・シーリングファン
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昼光の利用

太陽の光が届きにくい奥まで明るく

気持ちいい光の入れ方

  • 届きにくいところの光は、吹抜中庭トップライト(天窓)高窓開放的な間取りランマ引戸の工夫などによって、奥まで届けます。直射光が当たらない、北窓は内装を白くするなどの導光で明るく。
  • 光井戸(ライトウェル)は、吹抜上部の天窓高窓からの光を、壁に反射させながら、下階へ光を届けます。
  • 地窓(床近くの窓)や障子・断熱ブラインド等の拡散光など雰囲気を創る光も考えます。
  • まぶしすぎる光を庇等でカットし、デッキ・床や軒裏・天井に反射させるとやわらかい光になります。
  • 事例は、南隣宅が3階建てのため、光井戸吹抜東窓トップライト高窓を設け、各階を明るくしました。
▲光井戸・吹抜・東窓・天窓・高窓・障子
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日射熱の利用

太陽が暖房代わり、窓はストーブ

ひだまりの心地よさ

  • 大きな南窓を、なるべく真南に向け日射取得型のLow-Eガラス(薄い金属膜付の省エネガラス)を使えば、暖房代わりや補助になります。LD吹抜にも大きな南窓があると、よりいいです。
  • 可能なら建物の配置自体や南壁を真南やなるべく真南に向けます。
    床や壁が暖められ、空気を動かさずに、室内が暖かくなるので、エアコン等の温風暖房よりも快適です。
  • さらに、採り込んだ日射熱を蓄える蓄熱性のある建材の床や壁や天井があると、陽が落ちた後も放熱されます。
  • 事例は、敷地の真南方位が、西に傾いていたので、南壁だけを真南へ向けた台形間取りです。
▲南壁を真南へ向けた台形平面
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日射遮蔽

夏に太陽という暖房を入れないよう、外側で遮蔽

日射は横からも差し込んでくる

  • 軒や庇を出すのが基本ですが、横から差し込む朝日や西日は防ぎきれず、窓を覆いつつ風を通せるといいです。
  • 断熱ブラインド遮熱レース等で窓の内側で遮熱するよりも、外側で遮熱するほうがずっと効果的です。
  • 日射遮蔽スクリーン電動可動ルーバーシャッターや、よしずすだれを掛けられるフックを軒や庇に付けたり、オーニングを付けられるようにした事例があります。外付ブラインドの方法もあります。
  • 事例は、敷地の真南方位が、西に傾いていたので、階の高さを抑え、バルコニー手摺縦格子を長くしました。
    可動通風ルーバー雨戸を設置しています。東デッキのパーゴラにはシェード「緑のカーテン」がつくれます。
▲手摺縦格子・パーゴラ
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高気密・高断熱

家じゅうのすきまを少なくし、断熱は窓が重要

高気密・・・すきまを少なくし、熱と湿気もれを防ぐ

  • 気密性とは、すきまの少なさのことであり、熱エネルギーをバケツに入れた水に例えると、穴が底にあいていては、もれてしまい、蛇口から、いくら、水を注いでもいっぱいになりません。
  • 気密性を高めることは、外壁内や天井裏に湿気が入ることを防ぎ、結露防止の意味でも重要です。
  • 気密パッキンや可変調湿気密シート等による気密を高めた住宅で、気密試験を行った事例があります。

高断熱・・・窓が重要、様々な断熱方法

  • 大半の家の、床直下に断熱材を入れる床断熱ではなく、基礎を断熱する、基礎断熱の事例が多いです。
    床下空間に伝わった日射熱を基礎に蓄熱することができます。
    床下空間は外部扱いではなく、室内空間と同じ扱いになるので、畳下収納床下収納を創れます。
  • 基礎断熱の場合は、床下空間全域をあたためる、床下エアコン暖房とセットで設計することが多いです。
    特に、吹抜を設けたり、開放的な間取りの家では。床暖房のように、輻射熱で空間が暖まります。
    LDだけでなく、キッチンや廊下、洗面、トイレなど水回り等にも暖気が届き、ヒートショック対策になります。
    さらに、窓際や水まわり等の各所に設けた、床吹出口からも暖気が上がり、窓際は冷気降下対策になります。
  • 外壁は充填断熱で、さらに断熱性を高めたい場合、付加断熱にするといいです。屋根付加断熱の事例あります。
  • ロフトや小屋裏収納、勾配天井の設計事例が多く、屋根面で断熱する、屋根断熱の家の事例が多いです。
  • 冬は6割、夏は7割の熱が窓から出入りするので、窓が重要です。樹脂窓トリプルガラスの事例があります。
    窓に障子や空気層のある断熱ブラインドを設置したり、高気密高断熱の木製玄関戸を設計する事例も多いです。
▲可変調湿気密シート張り
▲床下エアコン
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自然素材の持つ力を利用して、省エネに

吸放湿性、断熱性、保温性、蓄熱性、吸臭性、吸音性など

呼吸する素材

  • 無垢フローリングや、壁や天井の紙クロス塗り壁木板等の自然素材は吸放湿性があり、夏の湿気を吸い、冬にはき、肌やのどにやさしく、快適性がアップし、結露を抑え、ダニカビを抑え、空気をキレイにします。
  • 夏に湿度が低ければ、エアコンの設定温度を高めにでき、冬に湿度が高ければ、エアコンの設定温度を低めにでき、省エネになります。
  • 古新聞を繊維化したセルロースファイバー断熱材をよく採用します。紙の原料は主に木材や草などです。
    壁内結露対策になり、断熱性耐火性吸音性が高いです。
  • 羊毛断熱材大豆ウレタン植物油ウレタンの事例もあります。
▲セルロースファイバー断熱材